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第2章 同行援護の制度と従業者の業務 ⑦

 第二章の⑦は実務上の留意点です。
 同行援護の社会的な役割について触れてきましたので、最後は同行援護に従業する者と、同行援護を利用する視覚障害者への留意点をお伝えします。

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 1 全般的な部分では、対人援助職の基本的な姿勢として、
 ① ハラスメント(不適切な言動)をしない
    これは、説明するまでもないと思います。制度を利用する視覚障害者への不適切な言動は控えましょう。
 ② 守秘義務の厳守
    これも、当然のことで、サービスを利用した視覚障害者の話を他者にしない。
 ③ 個別の対応をしない
    バイスティックの7原則と異なるようですが、これは「業務の範疇を超えた対応」となります。お互い人間なので、仲良くなった方には、同行援護の支援内容以上の支援をしてしまいがちです。しかし、その行動が視覚障害者のQOLの低下を招くことになる可能性があることもプロとして意識しておきましょう。
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 2 同行援護従業者が留意すべきこと
 ① プロ意識を持つ
    これは1-③でもお伝えしたように、視覚障害者支援のプロとしての自覚を持つことが大切です。
    意識の低下は、安全性の低下につながり、さらには視覚障害者のQOLの低下に繋がります。
 ② 費用的負担をさせない
    よく質問があるのが、「サービス提供中の食事代」についてです。
    これは、視覚障害者の性格もありますので、トラブルを避けるためにも、食事を伴う場合は事前に視覚障害者と事業所で協議しておきましょう。
 ③ 利用計画を履行するするために必要な準備を行う
    同行援護のサービス中に迷う、公共交通機関を乗り間違える等がないように、目的地までのルートは調べておきましょう。
 ④ 同行援護技術の向上
    養成研修が全てではありません。研修時間は最低限の内容ですので、スキルアップ研修などに参加して常に最新の情報を入手することが大切です。
 ⑤ 移動中に起こる様々なリスクに対応する
    リスクマネジメントに関しては2-⑥を参照してください。
 ⑥ 未知の地域の情報取得
    これは③にも書きましたが、サービス提供中に迷うことなくスムーズに支援ができるように下準備として情報を取得しておくことが重要です。
 ⑦ 社会的環境を理解する
    社会性の検討に近いのですが、サービスを利用する視覚障害者の生活圏のローカルルールを知ることの重要性を伝えています。例えば、福岡県ではエスカレーターは左に乗って、右は急いでいる人のために空けています。しかし、関西圏では逆になります。このようにローカルルールを理解することで、地域になじんだ支援が可能となります。

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 3 視覚障害者として留意すべきこと
 ① 同行援護業務以外の依頼
    同行援護は外出に伴う支援ですが、自宅内の仕事を依頼されることがあります。依頼する視覚障害者との信頼関係もありますが、自宅内の支援は家事援助で行うことが原則ですので、依頼する視覚障害者も注意が必要であることを意味しています。
 ② 視覚障害者の購入した物の所持
    同行援護従業者の職務は外出時の安全の確保と情報提供です。よって視覚障害者の荷物は本人が管理することが大原則となります。
 ③ 時間や内容の変更
依頼している時間や内容を変更する場合は、できるだけ早い段階で事業所に連絡してください。事業所は同行援護従業者の手配を行いサービス提供の準備をしているので、体調不良等のやむをえない理由以外でのドタキャンは視覚障害者福祉の低下につながることとなります。
 ④ 白杖の所持
    白杖は視覚障害者のシンボルとして、外出する場合は携帯することが道路交通法第14条で義務付けられています。
    しかし、中途視覚障害者は視覚障害者であることを知られたくない方も少なくありません。そのため白杖の携帯を嫌う方もいらっしゃいます。その場合は、白杖を携帯することを強制するのではなく、視覚障害者と事業でどのように安全を確保するか話し合いをすることが大切です。

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 4 制度的な留意点
 ① 同行援護従業者の従事者数
    平成24年10月から施行された同行援護ですが、従業者の数は決して多くありません。
    今後も日本全国で養成研修を実施して、同行援護従業者を養成していくことが重要です。
 ② 研修会など
    技術の向上でも書きましたが、養成研修が全てではありません。あくまで同行援護従業者として活動するための最低限の技術です。そのため、養成研修終了後は、地域の勉強会や研修会に参加して、更なるスキルアップを目指しましょう。
 ③ 制度の周知
    同行援護を始め、視覚障害者支援の制度はまだまだ知られていません。
    私が東日本大震災の支援ボランティアとして岩手、宮城、福島の視覚障害者の支援に行ったとき、当事者、家族はもちろん、役場の方でも制度を知らない方がいらっしゃいました。今後、視覚障害者福祉の総合的な向上のために、制度を広く伝えていくことが大切です。
 ④ 家族やボランティアなど
    視覚障害者のQOL向上のためには専門職だけが頑張るだけでは総合的な向上には繋がりません。家族の理解、ボランティアの参加により、幅広い支援が可能になります。地域で行われている家族教室やボランティア養成研修も重要な役割を担っていることが理解できます。
 ⑤ 視覚障害者としての研修
    視覚障害当事者も総合的な福祉の向上のため技術を身につけることが重要です。
    それは、「手引きを安全に受ける技術」であったり、「自ら望む支援を適切に相手に伝える技術」であったりします。各地域の視覚障害者団体の勉強会や、市町村で実施されている視覚障害者生活教室などに参加し仲間作りや技術を共有していくことが大切です。
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第2章 同行援護の制度と従業者の業務 ⑥

  第2章の⑥はリスクマネジメントです。
 同行援護は外出先でのサービス提供となるため、様々な問題や事故の発生を視野に入れておかなければなりません。

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 突発的な問題や事故の発生原因として、利用者の体調変化が挙げられます。
 1 既往症への対応の確認
  ① 糖尿病の場合
     視覚障害の原因疾患第2位ですので、当然利用者にも多くいらっしゃいます。
     特に注意しなければならないのは「低血糖」発作です。血液中の糖分が低下し、寒気やふらつきがあり、さらに進むと意識を失うこともあります。同行援護中に低血糖の発作を起こした場合に備えて、利用者と事前に話し合いをしておくことが大切です。
テキストでは、「ブドウ糖等の補食同行援護授業者も携帯しておくと良い」とありますが、あくまで視覚障害者の自己管理が大前提ですので、同行援護従業者の自己判断で糖分の摂取を行うことがないようにしましょう。
  ② 狭心症の場合
狭心症の発作も糖尿病と同様に視覚障害者の自己管理が大前提ですが、発作が起きた場合、誰に連絡をするのか(かかりつけ医院への連絡含む)を事前に話し合っておきましょう。「少し休めば大丈夫」と言われる方も多く、発作が落ち着いて帰宅した後も観察が必要な場合もありますので、視覚障害者の家族、事業所の責任者への報告は必ず行いましょう。
  ③ 服薬の管理が必要な場合
同行援護中に服薬の時間となることがあります。事前に休憩できる場所を調べておくことも重要です。ただし、服薬に関しても視覚障害者の自己管理が大前提ですので、同行援護従業者の判断で休憩したり、服薬を指示することの無いように気をつけましょう。

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 2 支援中の確認
   同行援護で外出中は予想できない問題や事故に遭遇することがあります。
  ① 転倒や接触による傷
     同行援護中に最も多い事故は転倒による怪我です。
     同行援護従業者養成研修では実技講習も行いますが、実際の場面では予期せぬ事故に遭遇することもあります。転落・転倒による事故が発生した場合は、利用者の安全確保を最優先に行動し、怪我の状態によっては救急車の要請、家族・事業所への連絡を行います。視覚障害者の意識がある場合は本人に確認しながら行ってください。
  ② 食事中の事故
    長時間の外出となると、食事を摂る場合もあります。そこでは、食物を詰まらせる、アレルギー反応などの事故が考えられます。アレルギーに関しては事前に視覚障害者からのアセスメントで確認しておくことで、発生のリスクを抑えることができます。
食物を詰まらせることは、食事中の観察が必要となります。食事中の事故は未然に防ぐことが重要です。しかし、不幸にして事故が発生してしまった場合は、他の事故と同様に視覚障害者の安全確保を最優先に、家族・事業所への連絡を行ってください。
  ③ 熱中症などの天候に関わる体調不良
     夏場の外出では、熱中症への配慮が必要となります。熱中症の対策としてこまめな水分補給が有効ですが、糖尿病性腎症等で水分摂取の制限のある視覚障害者もいます。その場合は、日陰で休息をこまめに取るなど、体温の上昇を抑える工夫が必要となります。そうなると移動時間が長くなるので、余裕を持った行動計画を立てる必要がありますので、同行援護従業者は視覚障害者にその旨をしっかり伝えることが重要になります。
  ④ 心肺停止状態
     非常に緊急を要する場面です。視覚障害者の安全確保、救急車の要請、家族・事業所への連絡を迅速に行いましょう。
  ⑤ てんかん等の発作
     事前にどのような状況で起こりやすいか、起こった場合の対象方法を聞き取りしておきましょう。発作の前兆が有る場合、どのような変化がサインとなるかも聞いておくと、視覚障害者の安全確保につながります。
  ⑥ 他者との接触による事故
     同行援護従業者がどれだけ注意していても、他者からの接触を避けることができない場面があります。
     最近は携帯電話(スマートフォン)を触りながら歩く、自転車に乗る人が増えています。そうなると、いくらこちらが安全に配慮していても相手からの接触を避けることが難しくなります。
     そのような相手と接触した場合、視覚障害者の安全を確保した上で、怪我がないかを確認、怪我が有る場合は病院への移動もしくは救急車を要請、相手の連絡先を控える、家族・事業所への連絡を行います。

 このように、同行援護は外出するための援助を行うため、予想できない事故に遭うことがあります。どのような場面に遭遇しても「同行援護従業者の判断」で行動することがないようにしましょう。
 視覚障害者の全然確保を最優先に、視覚障害者の意思を確認、家族・事業所に連絡し、事故の対処方法について指示を仰ぐようにしましょう。

第2章 同行援護の制度と従業者の業務 ⑤

 第2章の⑤は同行援護従業者の業務です。
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 同行援護視覚障害者の社会参加を促進するために、日常生活に必要な外出の支援を行うことを目的としています。
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 外出先での代筆代読はとても大切なコミュニケーション支援です。
 代読をするときには、読み間違えのないように確実に読むことが大切です。同行援護従業者の判断で飛ばし読みをしたりしないように、視覚障害者の必要とする情報を確実に伝えましょう。
 代筆視覚障害者に代わって書くこと、役所等の申請書類には「代理人」欄がありますが、代理人は本人に代わって行為を行う者と定義されていますので、代筆をした者とは異なります。同行援護従業者の業務は「代筆」であるころをしっかりと理解しておきましょう。

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 買い物等の支援では、視覚障害者が商品を選択するために必要な情報を伝えることが大切です。
 代金を支払う場合は、視覚障害者本人が行うことが原則となります。

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 突然の大雨や風、公共交通機関が停止する等の理由で予定変更を余儀なくされる場合、視覚障害者と話し合いましょう。
 予定していたコースを変更する場合には、視覚障害者の家族、同行援護事業所に連絡することも忘れないようにしましょう。

 同行援護者の業務は、移動中の安全確保とともに情報提供が重要です。
 そして、安全に移動するためには、移動手段の変更も視野に入れる柔軟な対応も必要となります。

第2章 同行援護の制度と従業者の業務 ④

同行援護の利用では、利用手続きから利用者負担について説明します。
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 同行援護の利用手続きは、役所の窓口で行います。
 そして、独自のアセスメントシートを用いて、身体障害程度等級に関係なく、支援を必要とする人が使える制度であるとお伝えしましたが、同行援護の制度内で区分けがあります。
 それは、身体介護を伴う場合と伴わない場合です。
 身体介護が伴わない場合に関しては、上記のように役所の窓口でのアセスメントで支給決定されます。
 しかし、障害支援区分2以上の認定かつ、「歩行」、「移乗」、「移動」、「排尿」、「排泄」の調査項目のいずれか一つに認定された場合、「身体介護を伴う」と判断されます。
 身体介護を伴わない場合、30分未満が105単位、身体介護を伴う場合254単位とサービスに対する対価が大きく異なります。

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 同行援護のサービス利用者負担は原則1割です。
 この利用者負担は、対象者の負担能力によって利用者負担上限額が設定されています。
 利用者負担について、サービス提供事業所、同行援護従業者が説明することもありますが、お金の話はトラブルになりやすいため、利用者さん本人に役所で本人負担上限額の確認をお願いしましょう。

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 利用者負担の問題では、原則1割負担であるために多くのサービスを利用した場合、その分の対価を支払うことになりますが、視覚障害者にとって、日常生活を円滑に送るために同行援護は必要不可欠なサービスです。
 しかし、同行援護・その他の障害福祉サービスを利用し、負担上限額の37200円を支払うことで、生活保護の生活水準を下回る生活になってしまっては、ノーマライゼーションに基づく理念に反します。
 そこで、利用者負担が生活を圧迫しないように利用者負担上限額の引き下げられる場合もあります。

第2章 同行援護の制度と従業者の業務 ③

 第2章の③では、同行援護の制度の内容についての説明です。
  
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 同行援護の概要は、「視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行して行う移動の援護、排せつ及び食事等の介護その他の当該障害者等が外出する際に必要な援助」と規定されています。
 これは、視覚障害者が生活圏内では、頭の中の地図(メンタルマップ)があることで、ある程度の安全を確保しながら生活することができますが、メンタルマップのない地域でも安全に移動することができるようにという制度であることを意味しています。また、移動の支援だけでなく、外出先において、視覚障害がもたらす不自由を解消するための支援として「外出する際に必要な援助」と明記されています。


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 同行援護サービス内容は大きく分けて3つです。
 代筆・代読:移動時および、それに伴う外出先において必要な視覚的情報の提供
 移動の援護:移動時および、それに伴う外出先において必要な移動の援護
 排泄・食事等の介護:外出する際に必要となるその他の援助
 このように、移動支援と異なり、同行援護サービス内容は外出時の視覚的な支援全般となっています。

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 ただし、同行援護がどのような場面・内容でも利用できるわけではありません。
 同行援護の支給の対象外となるものがあります。
 ① 通勤、営業活動などの経済活動にかかわる外出
 ② 通年かつ長期にわたる外出
 ③ 社会通念上適当でない外出
 上記、3点については同行援護の支給が認められていません。
 ①はわかりやすいのですが、②・③は養成研修でもよく質問がありますので、ここでお伝えします。
 ②は主として通学・通園が例に出されます。長期的に受講の必要がる研修等は、行政の判断が必要ですので話し合いが必要となります。
 ③は、飲酒を伴う外出やギャンブル。とても判断の難しいところですが、同行援護従業者の職業倫理でも述べましたが、外出先での支援で、公共性の高い仕事ですので、視覚障害者の総合的な福祉の向上のためにも、視覚障害者・同行援護従業者共に利用について話し合う必要があるかもしれませんね。
プロフィール

伊東 良輔 (いとう りょうすけ)

Author:伊東 良輔 (いとう りょうすけ)
一般社団法人ぱるむ 代表理事
人間関係学修士
心理学を背景とした対人援助の理論と実践について研究しています。
2014年、一般社団法人ぱるむを設立。北九州市小倉南区に「伊東良輔社会福祉士事務所」、「ケアプランセンター らび」を開設。
社会福祉士として対人援助に関する講座で講師活動や成年後見人としての活動に関する記録、非常勤講師として社会福祉士を目指す学生の皆さんへの指導の記録。
視覚障害生活訓練等指導者として同行援護従業者養成講座を開催した講座の内容等を中心に紹介していきます。

資格
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・介護福祉士
・介護支援専門員(ケアマネジャー)
・福祉住環境コーディネーター2級・3級
・福祉用具プランナー
・視覚障害生活訓練等指導者
・相談支援専門員
・全身性ガイドヘルパー

社会貢献活動
・公益社団法人日本社会福祉士会 理事
 国際担当理事
 LGBT担当理事
・公益社団法人福岡県社会福祉士会 理事
 ぱあとなあ福岡所属(成年後見人)
 独立型社会福祉士支援委員会
 障がい者支援委員会
・日本ソーシャルワーカー連盟
 国際委員会
・日本障害者協議会 理事
 総務委員会 http://www.jdnet.gr.jp/guide/yakuin/member/ito.html
・日本障害者リハビリテーション協会 総合リハビリテーション研究大会
 常任委員
・アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク
 幹事
・北九州市障害支援区分認定審査会 委員
・宗像市・福津市介護認定審査会 委員
・中間市障害支援区分認定審査会 委員
・宮若市障害者計画・障害福祉計画推進協議会 委員
・福岡県介護実習・普及センター 運営委員
・福岡県社会福祉協議会 運営適正化委員
さわやか福祉財団 さわやかインストラクター

一般社団法人ぱるむ
・伊東良輔社会福祉士事務所
・ケアプランセンターらび
・権利擁護センターせるもん
〒803-0273
福岡県北九州市小倉南区長行東1丁目11-16
一般社団法人ぱるむ 長行事務所
TEL:093@776‐7115
FAX:093@777‐5068
ホームページ:http://hp.kaipoke.biz/zau/

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